へっぽこ登山日記 vol.9  落川上部 沢登り



 8月の暑さも和らぎ、台風も過ぎ去った9月中旬。
9月の定休日のうちの1日は台風にもぎ取られ(何もできなかったよ・・・)、残る1日が間近に迫ったとある一日。へっぽことしてはこの定休日も特に予定は無く、家でボーっとひきこもり生活を過ごすかもしくはアクティブに自転車屋久島1周でも・・・と考えておりました。
 すると、ちょうど来店していた友人・ガイド吉原氏(以後軍曹)からお誘いが。

「明日のご予定は?」

 特に何も考えていない旨を伝えると、某所に沢に行きたいなるへっぽこの書き込みを見ていてくれた軍曹から沢のお誘いが。こちらとしては断る理由など無く即OK。
で、場所は・・・へっぽことしてはあまり難解な所はご遠慮願いたいのですが・・・と思っている間に場所決定。落川の滝の上から船行前岳を目指す、というルートだとか。


 <落川とは>

 宮之浦―安房側の町境を流れる川。小瀬田あたりで山手を見ると滝が見える。これが「落とすの滝」。数年前にこの滝近くまでは行った経験アリ。

 ―で、今回はこの滝より上の部分の沢を登り、船行前岳頂上を目指すという事らしい。なかなか面白そうなルートである。(数年前のへっぽこには考えられない発言である。)



 沢登り当日―
 集合が午前6時。思いのほか早く起きてしまったので時間を持て余し、10分前には集合場所で待機するへっぽこ。天気は良好、朝はちと肌寒い感があったので、沢登りは寒くないだろうか?と少し心配になる。
 6時を少し過ぎたあたりで他メンバーが集合。今回の面子は、定休日という事でへっぽこ・H店長・社長のナカガワスポーツ軍団と発起人(?)の吉原軍曹。以上4人で沢―ピークを目指します。

 まず、船行前岳の登山道近くに車を1台止め、もう1台で落すの滝入り口を目指す。
茶畑の中にある入り口(?)から山に入り、尾根っぽい所へと登っていく。以前の記憶も徐々に蘇る。しかし、そこで頭に浮かんだ事と言えば急勾配でやたらしんどい思いをした事だけ。・・参考にならん。

 とにかく、一行は斜面を登る、登る。右手からは水の音がするがまだ目的地に着かない。社長は「まだ大きく高巻いた」と言うが、そんなに激しく登った覚えはない。確かに滝近くは崖になっているから不用意に近づけば大変危険だ、という意味も含んでいるのだろうが・・・さらに大きく巻いて進むのは、さすがにイヤ。

 とりあえずは右手、沢に近い方で道があるかどうかを見に行ってみる事に。
すると・・・あるじゃん、道。崖に近くも無く、安全ルートな感じ。そこをやや進むと、沢が見えた。滝は・・・ない?
そう、降りた所から滝は見えなかった。予定の滝のすぐ上ではなく、落とすの滝のさらに上の部分に出たらしい。軍曹曰く、「滝のすぐ上も結構難しい所だから、よかったかも」との事。結果オーライ、僥倖ですな。

しかし・・・スタート地点に立つのに、1時間掛かった・・・・もう結構しんどいんですけど・・・。

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 一服の後、いよいよ本命の落川沢登りのスタート!
9月も後半に入り沢登りはキツイかなぁと思いましたが、なんのなんの。日差しも強くなってきた8時半、高巻きの繰り返しで汗だくの体に沢の水は気持ちが良い。・・・といってもまだ前半、足しか水に浸かっていませんが。

 それからちょっと高巻いたり、岩の上をてこてこと歩いたりで約30分。最初の難関がやってまいりました。目の前には・・・滝。結構な高さのある、滝。
さすがにこれは無理だろう、とするとまた横を巻いて・・・結構きつそうだなぁ。そうへっぽこが思っていると、後ろで軍曹。

「行ってみましょうか」


・・・マジスカ?
そう言うと軍曹は滝へ近づき、崖に張り付く。深さはさほどないらしく、ってことは落ちたらヤバイのでは?なんて思っているへっぽこなどお構いなし、軍曹はスルスルと滝を登っていく。
それに続いてH店長。これもやはりフリーでスルスルと登っていく。途中、軍曹がロープを用意し下に垂らすが特に必要ない感じで滝を登りきる。次は・・・おいらですか?

 そして、順番が回ってきた。登らない訳には行かないし、目の前で登っている人を見ると何故だか自分もできるような気がしてくるのはどういう事だろうか?とにかく滝の真下まで来て・・・

 (うあ。高い・・・)

急に気持ちが萎えてくる。とりあえず壁にへばりついてみて、手がかりを探す。・・・およ?手が掛かる・・・足・・引っかかるな・・・いけるか?
急にやる気が回復。それではもう一歩進もう、という所へストップの声。壁に張り付いた状態でしばし待つ。すると、先ほどのロープが上から降ってくる。・・やはり、これを付けなければ怖いですな。冷静に落ちるかも知れない状況を考える。いやいやいや、怖い怖い。



 腰ベルトについているカラビナにロープを付け、気を取り直してアタック!滝を浴びながら進みたい気持ちはしますが、やはりリスクを考えるとそうもいかず。上の指示に従い、苔のある壁面をゆっくり登る。必死に指の掛かる場所を探し、足を乗せても大丈夫そうな場所をそれこそ手探り、足探りで探す。すんごいプレッシャー(主に自分が落ちるのではという気持ち)でビクビクしながら、なんとか安全地帯に到達。ん、到達・・・?

おお、やりましたよ!へっぽこは滝を登ることに成功しました!!

ロープを外し、自分が登ってきた場所を上からあらためて覗き込む。んー、高いね・・・よく登ったなぁ。

 暫くして、みんな無事滝を登り終えた後再び出発。
大きな滝を登り終えた達成感とその興奮によりちょっとテンションが高くなっているへっぽこさん。スタート時よりだいぶやる気がでて来ました。もっと難しそうな所も登れるかも、なんて錯覚さえ覚えてます。
 ざぶざぶと沢を歩き、腰まで水に浸かったりと沢ライフを楽しみつつ進みます。9月の川はまあ冷たくありますが、気温が若干高めなのでまだ気持ちよく感じます。


 滝制覇の興奮冷めやらぬ1時間後、再び滝登場。先ほどと同じ位の高さの滝です。
先程の滝を登った感覚が残っていて、これも登れると思ってしまっているへっぽこ。いやはや今考えると素人考えだな、と思います。いや、現地でもその数分後にそう思ったのですが。
行けそうな感じはするが、真ん中から上へ上がるのが難しそうと軍曹が言う。あそこから上には滝の中を進まなければならないからかな?と思うへっぽこ。
とりあえずアタック、という事でH店長がトライ。滝つぼは先ほどの場所よりやや深いらしくちょっとだけ安心。しかし向かって右手には岩があり、そちらに落ちると危ないなぁとも感じる。
H店長は順調に滝の中を登り、真ん中に到達。軍曹はそこから上に上がるのが困難なのでは?と予想していた。さて、H店長は・・右側の苔のある所に逃げる。やはり滝の中を登るのはいささか難しいようだ。慎重に苔部分で手がかりを探すH店長。それは不意に起こった。
壁にかけていた足がズルッと滑り・・・・



そのまま滝つぼへ落下!

みんな慌てて駆け寄り、声をかける。H店長は脛を打った程度でそれ以外は特に外傷は無く、事無きを得た。この滝落ちでへっぽこの頭は一気に冷えた。さっきまでの「登れそう」という安易な考えは即刻無くなった。
無論、ここは滝を避け、高巻きをして越える事にした。
いやはや、アタックチャンスは達成感と興奮を与えてくれるが、忘れるなかれこういうリスクも存在する。アタックする勇気は必要だが、リスクがある事も忘れないようにしなくては。

 とはいえ。
一度上がってしまったテンションはやはりいきなり下がる訳ではなく。先ほどのショックで下降気味だったが、水の中をジャブジャブ、岩をよじ登るなどをしているとその様子はみるみる回復。やはりあの滝を登れた感動から、ちょっとした壁もよじ登ろうとしてしまう。指が掛かると、登れそうな気がする。
・・・目覚め、ですかな。

 そんなへっぽこは軍曹から色々と教えて頂きました。指を掛ける際、上からだけでなく下から引っ張り上げるような感じでホールドを取る事、腕全体で岩を抱えるようにすることで腕の力を使わずに体制を維持する事など、へっぽこにとっては実践的かつ為になる事をたくさん教えて頂きました。

 3時間ほどの遡行後、三叉の場所に出た所でちょっと早目の昼食を取る事に。
ここから先は水が少なく、ゆっくり休憩を取る場所がないのだとか。・・・水が少ないという事は、アタックチャンスはもうないのですな・・・。ちょっとがっかりのへっぽこ。でもここまででだいぶ充実した沢登りを経験できたのでよし!
だったんですけどね。ここからがキツかった。

 11時55分、昼食を終え再度スタート。
ここからは水が少なくなる・・・の言葉通り、のっけから沢幅は小さく、水の流れも一気に減る。そればかりかごろごろと大きな岩が行く手を塞ぎ、あろうことか傾斜も強くなっている!
地図を見せていただくと、船行前岳までここから一気に突き上げる。もちろん、等高線の目もまあ詰まっている。おおお、楽しい沢遡行が一変して登りのトレーニングに。汗はダラダラ、しかし沢は沢と呼べる代物ではない石のごろごろした「沢だった場所」。確かにこれも沢登り・・・なのか?

 果てしなく続くと思われた登りもやがて終焉を迎える。1時をもう少しで過ぎようかという頃、目の前に尾根筋が見える。あそこまで登ればほぼ登りは終わりだ。
尾根に出て、すこし歩いた所で三角点を発見!オメデトウ!船行前岳到達!!
特に登山道という所ではない場所を歩いた為、一人では絶対来れないだろうなぁというルートからの踏破。でも、これができるくらい読図をしっかりしないといけないんだよねぇ・・・・。

 三角点から10分ほど歩いたところに、船行前岳の祠がある。それをお参りしてきた。
ここまで無事に来られました。帰りも無事下山できますように―。そうお願いして、祠を後にしました。
もちろん、無事下山できました。しかし・・・歩きづらかった!おまけに傾斜がきつい。下りでだいたい2時間掛かりましたが、いやしんどかった。これを登るのを考えると・・・いや、登る気はしないなぁ。これを岳参りの度に登っている船行集落の方は大変だ、と思い、同時に感心だなぁと思いました。


 9月ももう終わるので、沢登りはまた来年・・・
じゃないかもしれません。屋久島沢あるある会は、冬でも沢に行くぞ!という集団ですから・・・。本トですかね?おいらは冬は遠慮したいです・・・。



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